読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ケンヂのきもち

まずは自分を知らなきゃね~

ケンヂの物語  少年時代 後編 初稿 ( 後編2)

(後編2)

 

 

ケンヂがは卓球部をやめた後、テニス部(ソフトテニス部)に 入部した。

ケンヂと同じ時にやめた他の5人も全員テニス部に入部した。

小さな卓球台を大きなコートに替えたのだ。

途中入部のケンヂ達は歓迎された。古い練習用のラケットを貰い、素振りの練習や練習試合をしながらルールを教わった。どうしても『卓球打ち』になるケンヂ達に丁寧に教えてくれた。

入部の翌日ケンヂは部長に呼ばれた。 部長の I は背が高くガタイが良く、色黒でハンサムだった。

ニヤニヤしながら「ケンヂのお兄さんホント頭いいんだよなぁ」と言ってきた。

I 部長のお兄さんは偶然ケンヂの兄と小学校からの同級生で、仲が良く、I 部長も何度も一緒に遊んだ事があったみたいだった。

ケンヂが珍しい苗字なのですぐわかったそうだ。ケンヂも話を聞いて、I 部長の名前でお兄さんが誰だかわかった。

また、卓球部でのイキサツを聞いてきたのでありのままを話した。

I 部長は「卓球部の2年生がちょっかい出してくるようならおれに言え」と言ってくれた。ケンヂは素直にうれしかった。

 

 

 

 

この中学校は 旧第三国民学校と言う名前で、原爆の日、爆心地から1.2km付近で建物疎開作業中被爆し生徒教員含め210人が犠牲になっていた。

毎年8月6日には構内で全校生徒による慰霊祭が行われる。

入学当時から平和教育が盛んに行われ、原爆の話を聞いたり『青い空は』『ああ許すまじ原爆を』『夾竹桃の歌』『似島』『飛べよ鳩よ』・・・・など沢山の原爆の歌を覚えた。悲しい歌ばかりだった。

クラスから男女一人ずつ『慰霊執行委員』に選ぶとき、ケンヂとMさんと言う女の子が選らばれた。

f:id:sigecyan:20160930012100j:plain

 

Mさんは眼がパッチリとして可愛らしく明るい活発な子で、学級委員なんかが似合う子だった。男子生徒にも人気がある子でケンヂも気になっていた子だった。

でも慰霊執行委員になるまで、Mさんとはほとんど話したことがなかった。

慰霊執行委員の仕事は、慰霊者訪問をして原爆の話を聞き、その話をまとめて冊子を作ったり、慰霊祭の進行をしたりするのが主な仕事だった。

土曜日の午後、なんどもMさんと待ち合わせて沢山の慰霊訪問に行った。

Mさんとの待ち合わせにケンヂはいつもドキドキしていた。

ケンヂは明るく活発なMさんとは、気軽に話しかけてくれるが、反対に、いまだにウブで赤面症の上にどもってしまって上手く話せなかったが、次第に打ち解けMさんと仲良くなっていった。

夏も近い土曜日の午後、被爆者のおじいちゃんおばあちゃんから聞いた原爆体験談をまとめる作業をMさんと行っていた。他の生徒は皆帰るか部活に行っていて教室内は2人っきりだった。

「さっきさ、Sさんがケンヂくんの机にノート入れてたよ。なになに?」

その日Sさんは交換日記ノートを朝入れれず、授業が終わった後見つからないように入れてたのだった。

ケンヂはあせってしまい、しどろもどろにわけのわからないことをいっていたが

「あれ、交換日記でしょう~」とMさん・・・なんてカンの鋭い・・

ぱっと顔が熱くなり、どもって言葉にならないケンヂを遮りさらにトドメを・・・

「ケンヂくんとSさん付き合ってるんだ・・・」

「い、いや、そそそんなんじゃなくて・・・Sさん友だちいないから・・・」

「付き合ってるんじゃないの? Sさんかわいいよね~」

「かかかわいいね・・・」もはや何を言っているのか・・・

「付き合ってるんじゃないの? ホントに? Sさん話すの苦手みたいだから交換日記してるの?」

「う、うん・・・そそうなんだ・・」

完全にばれてしまっている。一瞬のうちにクラス中にその事が知れてしまうことを想像し愕然とした。

「そうなんだ・・・それならわたし立候補しようかな・・・恋人」

 

Mさんも顔が真っ赤になっていた。

「前からケンヂくんのこと気になってたんだ。ケンヂくんが慰霊執行委員になったからわたし立候補したの」真っ赤になってにっこり微笑んだ。

「う、うん。おれもMさん気になってた・・・」ケンヂは赤ちゃんのように真っ赤のまま答えた。

Mさんの顔はパッと明るくなり「うれしい」

ケンヂもうれしかったが、Sさんの俯き気味な顔を思い出してしまい、罪悪感に苛まれ、複雑な表情だったに違いない。

実際ケンヂはSさんに対し恋愛感情ではなく、Sさんの唯一の友だちと思って交換日記をしていた。

Sさんがどう思ってケンヂと交換日記をしていたかはわからなかった・・・

家に帰っても罪悪感のような感情が圧し掛かったままだった。